2013年11月28日木曜日

日本人メジャーリーガーの2013年を採点 ”野手・リリーフ編”

〇上原浩二(レッドソックス) 95点
73試合(リーグ7位) 4勝1敗 21セーブ 防御率1.09 74.1回 101奪三振 
WHIP0.57 FIP1.61 xFIP2.08 tERA1.07 fWAR3.3 rWAR3.6

シーズン中に歴史的な快投を披露し、ポストシーズンでも圧倒的存在感でワールドシリーズの胴上げ投手になるというほとんど完璧なシーズンを送った。
その名は今では全米に知れ渡り、ボストンのファンで彼の名を知らないものはいないであろうというくらいに知名度を上げた。
しかもそれを38歳という年齢でやってしまうあたり凄みを感じる。
惜しむらくはクローザーへの転向が中盤になってからだったためセーブ数が伸びなかったこと。
来季は今季の再現は難しいだろうがシーズン通してクローザーを務めることができればセーブ王も狙えるだろう。
すでにリーグ屈指のクローザーとしての地位は揺るぎないものになりつつあるが、来季は衰えと披露が懸念されている。


〇田澤純一(レッドソックス) 70点
71試合(リーグ10位) 5勝4敗 0セーブ 防御率3.16 68.1回 72奪三振
WHIP1.20 FIP3.22 xFIP3.03 tERA4.42 fWAR1.1 rWAR1.0

上原の影に隠れてしまったが田澤もレッドソックスの主力投手の一人として十分な活躍を見せた。
相変わらず奪三振が多く与四球は少ないという理想的な投球だが、今季は被本塁打の多さが少々目立った。
また9月に防御率6点台と調子を落としてしまったのももったいなかったが、これは初めてのメジャーフルシーズンで疲れが出てしまったのだろうか。
しかし彼はまだ27歳と若く、このまま順調にキャリアを歩んでいけばレッドソックスのクローザーになるチャンスも巡ってくるはずだ。
 

〇青木宣親(ブルワーズ) 65点
155試合(リーグ16位) 打率.286(同20位) 8本塁打(同101位) 37打点(同97位)
出塁率.356(同19位) OPS.726(同45位) 80得点(同15位) 20盗塁(同16位)
fWAR1.7 rWAR3.0

メジャー2年目となった今季も大きな怪我なく2年連続の150試合以上出場でチームに貢献。
打率、本塁打、出塁率、得点と昨季とほとんど変わらない水準を維持しているように見えるが、二塁打が激減したため打撃貢献度は大きく下がってしまった。
また盗塁も失敗が多く数が伸び悩みリードオフマンとしてはやや物足りない結果に。
それでも守備面での貢献度は高く、DRSは右翼手の中ではリーグ3位という好成績を残しており、特に送球面の評価が高い。
総合的には外野手としては可もなく不可もなくといったところだが、打撃優先の右翼手である以上もう少し攻撃力を上げなくてはいけないだろう。
盗塁成功率と長打力というのが今後の課題となるが、それでいてイチロー、松井以来のメジャー3割の期待もかかる。


〇イチロー(ヤンキース) 40点 
150試合(リーグ34位) 打率.262(同46位) 7本塁打(同129位) 35打点(同126位)
出塁率.297(同68位) OPS.639(ワースト2位) 57得点(同69位) 20盗塁(同19位)
fWAR1.1 rWAR1.4

かつてのレジェンドも年齢による衰えには勝てず、日米通算4000本安打こそ達成したが打率、出塁率、OPS、盗塁などがキャリアワースト。
すでに打撃に関してはメジャーレベルではなくなりつつあり、特に出塁能力と長打力の低さが顕著になっている。
それでも彼に出番が回ってくるのはひとえにその走塁と守備のおかげ。
ライトでの守備は相変わらず優秀で盗塁も数は少ないものの成功率は高い。
もはや速球へ対応できなくなっており来季はメジャー最後のシーズンとなるかもしれず、メジャー通算3000本安打は難しくなってきた。


〇藤川球児(カブス) 10点
12試合 1勝1敗 2セーブ 防御率5.25 12.0回 14奪三振 WHIP1.08
FIP2.80 xFIP2.85 tERA3.13 fWAR0.2 rWAR0.0

メジャーで実績のないリリーフとしては比較的高額な2年契約を結び満を持して海を渡ったが1年目は怪我で早期離脱し不満の残るシーズンとなった。
クローザーになるチャンスもあったがものにできず、来季に期待といったところ。
FIPやtERAが示すように、投球内容自体は防御率ほど酷いものではなかった。
不安視されていた制球面も安定しており、怪我がなければそれなりの活躍は出来ていたかもしれない。
しかし12試合しか投げられなかったため高評価をつけることは当然できない。
6月にトミー・ジョン手術を受けたために復帰は早くても来季6月以降となり、下手をすれば来季も全休という可能性もある。
状況的に3年目のチームオプションが行使される可能性は低いが、3年目以降のために来季復帰してある程度その実力をアピールしておく必要があるだろう。
 


2013年11月26日火曜日

今オフ最大の注目選手ロビンソン・カノの契約はどうなる!?

ヤンキースというチームはMLBにおいて特別だ。
デレク・ジーターがMLBの顔となったのも、彼自身の実力やスター性に加えてヤンキースという特別なチーム一筋でやってきたという要素が不可欠だ。
そんなヤンキースで今やチームの顔と言えるのが現役最高の二塁手となったロビンソン・カノである。
今オフFA市場最大の目玉となっているカノは10年305Mドルの超大型契約を要求していると言われる。
つまり市場最大の契約を求めているわけだ。
彼にそこまでの価値があるかどうかはともかく、ヤンキースはもし例年通りならばカノの10年契約をあっさり交わしてしまっていたかもしれない。
しかし今オフのヤンキースは、というより近年のヤンキースは今までとは違う課題を抱えている。
まず一つが年俸総額削減だ。
ヤンキースは近年大金を投じて常にFA市場の中心で有り続けた。
大物選手が市場に出てくれば必ずヤンキースの名が挙がってきたし、実際に2008年オフにサバシア、テシェイラ、バーネットと目玉を揃って獲得したこともあった。
そんな金満ヤンキースだが、そうやって獲得し見境なく長期契約を与えてきたツケがここにきてまわってきたのだ。
ぜいたく税のラインを常に上回ってきたためもし来季の年俸総額が1億8900万ドルを超えてしまうと50%もの税率を課されることになってしまう。
そこで一度リセットするために是が非でも年俸総額を削減しなくてはならない。
しかしここで二つ目の問題であるチームの成績とヤンキースというブランドが絡んでくる。
ヤンキースというチームは常に勝ち続けなければいけない勝利を義務づけられたチームであることは周知の通りだが、今季はプレーオフに出場することも叶わなかった。
主力に怪我人が相次いだことが大きな原因の一つだが、高齢化によるチーム力低下は言うまでもない。
つまりは現有戦力では強豪揃いのア・リーグ東地区では勝ち抜くことができないということになる。
とりわけワールドチャンピオンに輝いたライバルであるレッドソックスとは対称的なチーム状況なのだ。
この状況を打開するためにはなにをすべきか。
それはやはり補強である。
年俸総額は削減したいしチームの高齢化にも歯止めをかけたい、さらには補強して来季はプレーオフにも進出したいという非常に困った状況だ。

そこで今オフ最重要課題とも言えるカノの去就だ。
こんな状況のヤンキースがそう簡単に10年305Mドルなどという大型契約を締結することなどできはしない。
しかもカノと再契約できればそれで終わりというわけではなく、他のポジションにも課題は山積みなのだ。
例えば先発投手だ。
もはやエースではなくただのイニングイーターと化してしまったサバシアが復活する保障はどこにもなく、黒田とも前年より少し上積みした金額で再契約しなくてはならない。
ポスティングが実現し田中を獲得することができれば理想だが、どちらにしろアローヨ、ノラスコ、ガーザ、ヒメネスなどFA市場に出ている投手の中から誰かは獲得することになるだろう。
さらには捕手には先日5年契約でマキャンを補強した。
また野手ではグランダーソンとの再契約や内野のバックアップ選手の獲得なども課題として残っている。
これらを全てこなし、なおかつカノとも再契約してしまうと1億8900万ドルなどという額は超えてしまうことになるだろう。
つまりどちらもとるということはできず、カノと再契約し他の補強もして来季もぜいたく税を課せられるか、カノをあきらめ制限の範囲内の補強で来季に備えるか、あるいはカノ以外に大きな契約をせずほとんど現有戦力だけで戦うかという3択しかないのだ。
しかし現実的には3つめの選択肢をとる可能性は低く、すべてをとるかカノだけを諦めるかの2択になりそうだ。
もしヤンキースがカノと再契約する場合は、その契約内容は他のチームの条件提示次第ということになる。
心情的にはカノはヤンキースでフランチャイズプレイヤーとしてキャリアを終えたいはずで、他チームがヤンキースとほとんど同条件しか出せないのなら少々グレードダウンしても残留することになるはずだ。

ヤンキース以外でカノに高額オファーができるチームはどこがあるかというと、超金満化したドジャースや債権途中で数年以内に逆襲したカブスなどの名前が挙がる。
ドジャースは実際2塁手が弱点の一つになっており、今季2塁を守っていた堅守のエリスのオプションは破棄している。
しかしこのオフにはキューバからアレクサンダー・ゲレーロという26歳の二塁手を4年28Mドルで獲得しており、彼を使っていくつもりならカノの存在はむしろ邪魔になってしまう。
彼は遊撃手としても使えるためラミレスを再び三塁手で使ってカノを獲得する手もあるが、既に超大型契約を抱えているドジャースがそこまでするかは疑問だ。
カブスに関してはかなり面白い存在と言えそうだが、まだまだチーム力が整備されていない今の状況でそこまでの博打を打つ可能性はやはり高くない。
そうなるとやはりヤンキース残留という線が濃厚になってくるだろう。
契約は交渉の末7年200Mドル前後になるだろうか。
そう簡単に決着がつきそうにはないが、ヤンキースファンとしてはもはやぜいたく税など無視してさらなる大型補強に励んでほしいものである。
とにかく中途半端になることは避けなくてはいけない。



2013年11月24日日曜日

FA市場注目の捕手ブライアン・マキャンがヤンキースと契約

このオフのFA市場で野手の中でも5本指に入るほどの注目度を誇っていたブライアン・マキャンがヤンキースと5年でも最低でも85Mドル以上と思われる契約を成立させた。
マキャンは捕手として現役最高峰と言っても過言ではない長打力がウリの選手で、6年連続で20本塁打以上を記録している現役唯一の捕手だ。
今季の成績は以下の通りで、怪我もあって少し振るわなかった。

102試合 打率.256 20本塁打 57打点 出塁率.336 OPS.796 

しかし捕手としてはやはり打撃面において非常に優れているため、30歳の彼を欲しがるチームは少なくなかった。
今回契約したヤンキース以外では、最近フィルダーをトレードで獲得しさらなる長打力強化を図りたいレンジャーズなども強い関心を示していたと思われる。
しかしクオリファイングオファーの対象選手でもあり、市場価格の高さに加え獲得した場合はドラフト指名権譲渡というリスクも伴う。
それでも本格的に捕手不足、そして長打力の欠如に悩んでいたヤンキースとしてはやはりマキャンはヤンキースにとって魅力的な存在だったのだろう。
ただし贅沢税回避のために年俸削減したいはずのヤンキースとしてはまたしても長期大型契約を抱え込んでしまった形になる。
他の大型契約もまだ多くが残っており、カノとの再契約の問題もある今果たして本当に勝ちを求めながらの年俸削減が可能なのか疑問が残るところでもある。
とは言えヤンキースがやっとヤンキースらしい捕手を獲得したこと自体は朗報だ。
マキャンとの契約は6年目のオプションも含めれば100Mドルを超えることになるが、ヤンキースファンとしてはとにかく彼が怪我で長期欠場などしないことを願うばかりだ。

 


2013年11月21日木曜日

超ビッグトレードが成立 そこに潜む両者の思惑はいかに

大きな動向がまだなかったオフシーズンに衝撃が走った。
少し珍しい大物同士の1対1のトレードだ。
その大物とはプリンス・フィルダーとイアン・キンズラーだ。

プリンス・フィルダー(タイガース→レンジャーズ)
2013年 162試合 打率.279 25本塁打 106打点 出塁率.362 OPS.819 1盗塁
フィルダーは29歳の一塁手でブルワーズからFAになり9年214Mドルという超大型契約を結んでいた。
この先残っている契約は2014~20年まで各24Mドルずつだ。


 
イアン・キンズラー(レンジャーズ→タイガース)
2013年 136試合 打率.277 13本塁打 72打点 出塁率.344 OPS.757 15盗塁
キンズラーは31歳の二塁手で2013年からの5年70Mドルの延長契約を結んでおり、オプションも含めれば2018年まで契約が残っている。
この先の契約の内訳は2014年16Mドル、2015年16Mドル、2016年14Mドル、2017年11Mドル、2018年12Mドル(チームオプション)となっている。


この両者はフィルダーが5度、キンズラーが3度オールスターに出場するなど紛れもないトップ選手なのだが、これは一見かなり衝撃的なトレードに見えて合理的でもあるように思える。
まずレンジャーズだが、ここでは以前からキンズラーをどうするかで少し困ってもいた。
遊撃手には既に長期契約を結んでおり一流の守備・走塁を披露してくれる若いアンドラスがおり、そしてさらに全米1位の評価も受けたプロスペクトのジュリクソン・プロファーもいた。
これだけのプロスペクトだがルーキーイヤーとなった今季すでに内野各ポジションに確固たるレギュラーがいたためにプロファーは便利屋的扱いを強いられることになってしまった。
そのためキンズラーを外野や一塁にコンバートするという案は以前から出てはいたのだが結局実現しなかった。
プロファーを使っていくにはどこかを空けねばならず、そこで白羽の矢がたったのがキンズラーだったのだろう。
既に30歳をこえてここ2年はどこか不調気味のキンズラーは少し将来を危惧されていたのかもしれない。
そしてレンジャーズはフィルダーというオールスター一塁手を獲得することによってハミルトンに次ぐ左の強打者を獲得することに成功したわけだ。
これにより三塁手にはベルトレ、二塁手にはプロファー、遊撃手にはアンドラス、一塁手とDHはモアランドとフィルダーを使うことができるようになった。
余剰人員の問題を解決しさらに長打力を強化することができたわけだが、当然ながらそこには2020年まで残るフィルダーの大型契約というリスクもついてまわる。
今季少々不調気味だっただけに少しこの契約期間の長さは怖いのだが、フィルダーはほとんど怪我をしない選手だしアーリントンである程度打撃成績が底上げされるだろうと考えればそれほど高いリスクでもないのかもしれない。

続いてタイガース側からの思惑だが、タイガースはレンジャーズのようにプロスペクトが出てきたことによる玉突きでフィルダーを放出したというわけではない。
しかしタイガースはタイガースで弱点の補強と将来のための布石をうったのだ。
まず一つ今季のチームスタッツをみると明らかに目立つ弱点MLB最下位の盗塁数だ。
主軸だったカブレラ、フィルダー、マルチネスは当然ながら走塁貢献度などゼロに等しく、唯一スピードがあったジャクソンさえも怪我で8盗塁に沈んだため今季のタイガースでは二桁盗塁が一人も出なかったのだ。
チーム打率が1位でありながら得点数や二塁打数などレッドソックスに大きく水をあけられた(本塁打はほぼ互角)のはこのスピードのなさも原因の一端にあるはずだ。
加えて守備力の低さも問題だった。
堅実さはあったものの左翼手のダークスや中堅手のジャクソン以外は今季ほとんどが守備面で足を引っ張っていた。
そのためタイガースのオフの課題はスピードと守備の強化だった。
そこで今回のトレードに目を向けてみよう。
キンズラーは二塁手としてこの5年間のDRSがペドロイアに次ぐ2位に入るほど守備力が高い選手で、特にダブルプレーなどの際にその存在感を魅せる。
また走塁面に関してもデビューから8年連続で二桁盗塁、30盗塁を2度記録しているスピードのある選手だ。
またパワーもありある程度ボールを見ることができるので上位に置いておくとかなり貢献度が高い選手でもある。
それだけ走攻守が揃っている選手というのがタイガースにはおらず、フィルダーを彼に置き換えたことでカブレラを一塁へ再コンバートすることができ、三塁守備もアップグレードすることができる。
これにより遊撃手にイグレシアス、二塁手にキンズラー、中堅手にジャクソンとセンターラインの守備力を大きく改善することができた。
またそれ以上に大きいのが契約のダウングレードに成功したことだ。
フィルダー自身は優れた選手だが、さらに価値のあるカブレラの契約は2015年までであり、そして今季サイ・ヤング賞を獲得したシャーザーも2014年オフにFAになってしまう。
つまりここで大金を投じるためには2020年までの超大型契約が残っているフィルダーは実は足かせになっていたわけだ。
既にバーランダーやサンチェスに長期契約を与えていたタイガースとしてはそれほどの契約をいくつも抱えるわけにはいかず、何かを犠牲にしなくてはいけなかった。
そこで残り4年57Mドル(オプションを含めれば5年69Mドル)と総合的な活躍度を考えれば割とリーズナブルなキンズラーへと契約をダウングレードできたことで、シャーザーやカブレラに投資するだけの資金的余裕をつくることができた。
もちろんキンズラーにもリスクはある。
元々打撃はアーリントンの恩恵を受けたものでアウェイでは平凡という評価であり、走塁に関してもやや衰えを見せ始めた感がある。
しかしそこを考慮してもこのダウングレードと守備・走塁強化には大きな意味があり、タイガースとレンジャーズ両者の思惑がしっかり噛み合った合理的なトレードだと思う。



2013年11月17日日曜日

今、キューバ人メジャーリーガーが熱い!

2013年シーズンの日本人投手の活躍は素晴らしいものだった。
先発投手3人がエース級の活躍をし、上原、田澤はワールドチャンピオンの栄冠に輝いた。
サイ・ヤング賞投票ではダルビッシュが2位、岩隈が3位、上原もリリーフながらポイントが入るなど流石投手の国日本と言うべき結果だった。
それでは今MLBに最も旋風を巻き起こしているアメリカ以外の国は日本なのかというと、実はそうではない。
この日本人たちの活躍を上回るパフォーマンスを見せている選手たちがいる国があるのだ。
それが野球大国キューバである。
日本でもキューバの野球の強さはよく知られており、国際大会では常に優勝候補として名を挙げられる。
当然MLBでも活躍した選手が多数おり、MLBでも亡命したキューバ人を大金を投じて獲得することがよくある。
過去に活躍したキューバ出身のメジャーリーガーというと、通算462本塁打でMVP獲得もしたことがあるホセ・カンセコ、通算2030安打 585本塁打というレジェンド級の成績を残しているラファエル・パルメイロ、通算178勝している屈指のイニングイーターのリバン・ヘルナンデスなどの名前が挙がるだろう。
しかし残念ながらカンセコとパルメイロは薬物使用者でもある。

そんなキューバ人の注目選手が近年よくMLBに出てくるようになり、今MLBを席捲している。
その中でも注目の若い選手がたくさんいるのでその中の数人を今回紹介しよう。

〇ホゼ・フェルナンデス(21) マーリンズ
28試合 12勝6敗 防御率2.19 172.2回 187奪三振 WHIP0.98
今季20歳でメジャーデビュー、その後好投を続けサイ・ヤング賞候補にもノミネートされる活躍ぶりで見事新人王に輝いた若き豪腕。
過去に見舞われた苦難などで培われた強靭なメンタルとクレメンスやバーランダーとも比較される才能によって、弱小マーリンズのエースとして早くも君臨している。
来季はフルシーズン投げることになるだろうが、当然サイ・ヤング賞候補である。

〇ヤシエル・プイグ(22) ドジャース
104試合 打率.319 19本塁打 42打点 出塁率.391 OPS.925 11盗塁
低迷しかけていたドジャースを救った新星。
新人王候補にもなったが、出場試合数の少なさなども響いてフェルナンデスにはかなわず。
高打率を残す打撃技術とパワー、強肩にスピードと守備が上達すればMLB最高の5ツールプレイヤーにもなれる逸材で、鼻っ柱の強さもスターらしい。
とにかく身体能力が高く、今後MLBの外野手の中心になっていくだろう。

〇アロルディス・チャプマン(25) レッズ
68試合 4勝5敗 38セーブ 防御率2.54 63.2回 112奪三振 WHIP1.04
日本人もよく知っているキューバ人メジャーリーガーと言えば人類最速のこの人。
2012年はキンブレルとともにリーグ最高のクローザーとして君臨したが今季はまたもや制球が荒れ気味になり少々数字を落とした。
それでも速球の球威や奪三振力は変わらぬレベルで、チームには何度か先発転向を打診されているが本人の希望もあって今後もクローザーとしてその速球を見せつけてくれるだろう。

〇ヨエニス・セスペデス(28) アスレチックス
135試合 打率.240 26本塁打 80打点 出塁率.294 OPS.737 7盗塁
資金力のなさで有名なアスレチックスが大金を投じて獲得したことで意外性をもって受け止められていたが、デビューとなった2012年に打率.292 23本塁打とほとんど期待通りの活躍で地区優勝に貢献し、今季はさらなる飛躍を期待されていた。
しかし打率、出塁率を大きく落とし期待を裏切る結果に。
それでも秘めているパワーは間違いなく、今季はホームランダービーを制した。

〇ホゼ・イグレシアス(23) タイガース
109試合 打率.303 3本塁打 29打点 出塁率.349 OPS.735 5盗塁
今季は大物不在のア・リーグ新人王争いで2位になり、飛躍の年となった。
元々守備はメジャー最高クラス、打撃は最低クラスという選手だったが今季は思いのほか打撃がよくシーズン途中にはジェイク・ピーヴィが絡むトレードでタイガースに移籍しポストシーズンでもプレーした。
実際打撃は来季もこの水準を保てるのかは疑問だが守備センスは素晴らしく、ファンを魅了する美しい守備をみせる。

〇アレクセイ・ラミレス(32) ホワイトソックス
158試合 打率.284 6本塁打 48打点 出塁率.313 OPS.693 30盗塁
もはや若くないが2008年のメジャーデビューから安定した活躍を見せており、キューバ人特有の早打ちが目立つ打撃はともかく守備に関してはやはり一流であり、今季は走塁面でもキャリアハイのパフォーマンスを披露した。
流石にキューバ人ショートは身体能力が高く、また柔らかい守備を見せてくれる。

〇ユネル・エスコバー(31) レイズ
153試合 打率.256 9本塁打 56打点 出塁率.332 OPS.698 4盗塁
キューバ人にしてはよくボールを見る方で、打撃に関してはショートとしてはまずまず。
そして他のキューバ人ショート同様こちらも守備が素晴らしく、彼が今季見せた華麗な守備のシーンは日本でも少しばかり話題になった。
やはり身体能力の高いショートは魅力的だと思わせてくれる選手だ。

〇レオニス・マーティン(25) レンジャーズ
147試合 打率.260 8本塁打 49打点 出塁率.313 OPS.698 36盗塁
ハミルトンがぬけた穴を守備・走塁で埋めたマーティンは強肩と俊足がウリ。
マイナーでは打ちまくっていた打撃のよさはまだメジャーでは披露できていないが、今後も守備・走塁では確実に貢献していってくれるだろう。
彼の守備は一見の価値ありだ。

〇ケンドリス・モラレス(30) マリナーズ *FA
156試合 打率.277 23本塁打 80打点 出塁率.336 OPS.785 0盗塁
今オフのFA市場の目玉選手の一人。
2009年にエンジェルスの主軸として3割30本100打点を達成しこれから偉大なキャリアを築こうかという翌年にサヨナラホームランを打ってホームインした際に怪我をしてそこから2012年まで全休というなんとも情けない事態に陥ってしまった。
しかし2012年に復活しトレードでマリナーズへくると主軸としてイバニエスとともによく打った。
移籍先がどこになるにせよ打率.270 25本塁打前後を計算できる一塁手というのは案外重宝されるため、それなりの契約はえることになるだろう。

〇ヨンダー・アロンソ(26) パドレス
97試合 打率.281 6本塁打 45打点 出塁率.341 OPS.710 6盗塁
最近めっきり地味になってしまったパドレスにおいて長距離砲になることが期待されている一塁手。
数年前はレッズがボットーを放出してアロンソを後釜に据えるという案もあったほどの逸材だったがパドレス移籍後は本拠地の特性もあってかパッとしない活躍ぶり。
特に期待されていた長打力が発揮できていない点が痛い。
このまま元有望選手で終わるのかどこかで一花咲かすのか気になるところである。

〇ダヤン・ビシエド(24) ホワイトソックス
124試合 打率.265 14本塁打 56打点 出塁率.304 OPS.731 0盗塁
2012年に25本塁打を放ち将来のホワイソックスの主軸になることを期待されているパワーヒッター。
パワーがありその割に打率も酷い数字ではないのだがキューバ人らしく四球をあまり選ばないのが難点。
そのため出塁率は平均水準以下で、今後大きな活躍をしていくには打率を底上げするか四球を選べるようにならないといけないだろう。




2013年11月16日土曜日

2013年主要アワードまとめ

”MVP” 
ア・リーグ ミゲル・カブレラ(タイガース)
ナ・リーグ アンドリュー・マッカッチェン(パイレーツ)

”サイ・ヤング賞”
ア・リーグ マックス・シャーザー(タイガース)
ナ・リーグ クレイトン・カーショウ(ドジャース)

”新人王”
ア・リーグ ウィル・マイヤーズ(レイズ)
ナ・リーグ ホゼ・フェルナンデス(マーリンズ)

”最優秀監督”
ア・リーグ テリー・フランコーナ(インディアンス)
ナ・リーグ クリント・ハードル(パイレーツ)

”ハンク・アーロン賞”
ア・リーグ ミゲル・カブレラ(タイガース)
ナ・リーグ ポール・ゴールドシュミット(ダイヤモンドバックス)

”シルバー・スラッガー”
ア・リーグ 
C  ジョー・マウアー(ツインズ)
1B クリス・デイビス(オリオールズ)
2B ロビンソン・カノ(ヤンキース)
3B ミゲル・カブレラ(タイガース)
SS JJ・ハーディ(オリオールズ)
OF マイク・トラウト(エンジェルス)
OF アダム・ジョーンズ(オリオールズ)
OF トリ・ハンター(タイガース)
DH デビッド・オルティズ(レッドソックス)

ナ・リーグ
C  ヤディアー・モリーナ(カージナルス)
1B ポール・ゴールドシュミット(ダイヤモンドバックス)
2B マット・カーペンター(カージナルス)
3B ペドロ・アルバレス(パイレーツ)
SS イアン・デズモンド(ナショナルズ)
OF アンドリュー・マッカッチェン(パイレーツ)
OF マイケル・カダイヤー(ロッキーズ)
OF ジェイ・ブルース(レッズ)
P  ザック・グレインキー(ドジャース)

”ゴールド・グラブ賞”
ア・リーグ
C  サルバドール・ペレス(ロイヤルズ)
1B エリック・ホズマー(ロイヤルズ)
2B ダスティン・ペドロイア(レッドソックス)
3B マニー・マチャド(オリオールズ)
SS JJ・ハーディ(オリオールズ)
LF アレックス・ゴードン(ロイヤルズ)
CF アダム・ジョーンズ(オリオールズ)
RF シェーン・ビクトリーノ(レッドソックス)
P  RA・ディッキー(ブルージェイズ)

ナ・リーグ
C  ヤディアー・モリーナ(カージナルス)
1B ポール・ゴールドシュミット(ダイヤモンドバックス)
2B ブランドン・フィリップス(レッズ)
3B ノーラン・アレナード(ロッキーズ)
SS アンドレルトン・シモンズ(ブレーブス)
LF カルロス・ゴンザレス(ロッキーズ)
CF カルロス・ゴメス(ブルワーズ)
RF ジェラルド・パーラ(ダイヤモンドバックス)
P  アダム・ウェインライト(カージナルス)

”ロベルト・クレメンテ賞”
 カルロス・ベルトラン(カージナルス)


〈PLAYERS CHOICE AWARDS〉

Player of the Year
ミゲル・カブレラ(タイガース)

Marvin Miller Man of the Year
マリアノ・リベラ(ヤンキース)

Outstanding Player
ア・リーグ ミゲル・カブレラ(タイガース)
ナ・リーグ アンドリュー・マッカッチェン(パイレーツ)

Outstanding Pitcher
ア・リーグ マックス・シャーザー(タイガース)
ナ・リーグ クレイトン・カーショウ(ドジャース)

Outstanding Rookie
ア・リーグ ウィル・マイヤーズ(レイズ)
ナ・リーグ ホゼ・フェルナンデス(マーリンズ)

Comeback Player
ア・リーグ マリアノ・リベラ(ヤンキース)
ナ・リーグ フランシスコ・リリアーノ(パイレーツ)

〈月間MVP〉

”4月”
ア・リーグ クリス・デイビス(オリオールズ),クレイ・バックホルツ(レッドソックス)
ナ・リーグ ジャスティン・アップトン(ブレーブス),マット・ハービー(メッツ)

”5月”
ア・リーグ ミゲル・カブレラ(タイガース),ジェイソン・バルガス(エンジェルス)
ナ・リーグ ドモニク・ブラウン(フィリーズ),パトリック・コルビン(ダイヤモンドバックス)

”6月”
ア・リーグ ジェイソン・キプニス(インディアンス),バートロ・コロン(アスレチックス)
ナ・リーグ ヤシエル・プイグ(ドジャース),アダム・ウェインライト(カージナルス)

”7月”
ア・リーグ エイドリアン・ベルトレ(レンジャーズ),クリス・アーチャー(レイズ)
ナ・リーグ ジェイソン・ワース(ナショナルズ),クレイトン・カーショウ(ドジャース)

”8月”
ア・リーグ ミゲル・カブレラ(タイガース),イバン・ノバ(ヤンキース)
ナ・リーグ マーティン・プラド(ダイヤモンドバックス),ザック・グレインキー(ドジャース)

”9月”
ア・リーグ ジョシュ・ドナルドソン(アスレチックス),ウバルド・ヒメネス(インディアンス)
ナ・リーグ ハンター・ペンス(ジャイアンツ),クリス・メドレン(ブレーブス)

〈月間最優秀新人〉

”4月”
ア・リーグ ジャスティン・グリム(レンジャーズ)
ナ・リーグ エバン・ガティス(ブレーブス)

”5月”
ア・リーグ ネイト・フレイマン(アスレチックス)
ナ・リーグ エバン・ガティス(ブレーブス)

”6月”
ア・リーグ ホゼ・イグレシアス(レッドソックス)
ナ・リーグ ヤシエル・プイグ(ドジャース)

”7月”
ア・リーグ クリス・アーチャー(レイズ)
ナ・リーグ ホゼ・フェルナンデス(マーリンズ)

”8月”
ア・リーグ マーティン・ペレス(レンジャーズ)
ナ・リーグ ホゼ・フェルナンデス(マーリンズ)

”9月”
ア・リーグ ウィル・マイヤーズ(レイズ)
ナ・リーグ ゲリット・コール(パイレーツ)

2013年11月15日金曜日

2013年MVPはミゲル・カブレラとアンドリュー・マッカッチェン

サイ・ヤング賞同様こちらも大きな波乱はなかった。
ア・リーグが2年連続のミゲル・カブレラ、ナ・リーグが初のアンドリュー・マッカッチェンが受賞。
投票の内訳は以下の通り。


2013 AL MVP VOTING
Player, Club1st2nd3rd4th5th6th7th8th9th10thPoints
ミゲル・カブレラ, DET237385
マイク・トラウト, LAA5193111282
クリス・デイビス, BAL14111211232
ジョシュ・ドナルドソン, OAK114933222
ロビンソン・カノ, NYY1592652150
エバン・ロンゴリア, TB466453103
ダスティン・ペドロイア, BOS155542199
エイドリアン・ベルトレ, TEX28734299
マニー・マチャド, BAL21255757
デビッド・オルティズ, BOS212212247
ジェイソン・キプニス, CLE1133531
マックス・シャーザー, DET1211225
アダム・ジョーンズ, BAL119
エドウィン・エンカーナシオン, TOR127
グレッグ・ホランド, KC13
カルロス・サンタナ, CLE13
ココ・クリスプ, OAK113
ジャコビー・エルズベリー, BOS113
トリー・ハンター, DET12
岩隈久志, SEA12
上原浩二, BOS22
ダルビッシュ有, TEX11
フェリックス・ヘルナンデス, SEA11
サルバドール・ペレス, KC11
シェーン・ビクトリーノ, BOS11


2013 NL MVP VOTING
Player, Club1st2nd3rd4th5th6th7th8th9th10thPoints
アンドリュー・マッカッチェン, PIT2811409
ポール・ゴールドシュミット, ARI159132242
ヤディアー・モリーナ, STL28466121219
マット・カーペンター, STL65439111194
フレディ・フリーマン, ATL578811154
ジョーイ・ボットー, CIN2873412149
クレイトン・カーショウ, LAD844541146
ハンリー・ラミレス, LAD1121233358
カルロス・ゴメス, MIL1362343
ジェイ・ブルース, CIN1132330
クレイグ・キンブレル, ATL113327
シンス・チュー, CIN1114323
ジェイソン・ワース, WSH122620
アンドレルトン・シモンズ, ATL2414
ヤシエル・プイグ, LAD2110
ハンター・ペンス, SF1127
トロイ・トゥロウィツキ, COL215
アレン・クレイグ, STL114
エイドリアン・ゴンザレス, LAD114
バスター・ポージー, SF13
アダム・ウェインライト, STL13
マイケル・カダイヤー, COL33
マット・ホリデイ, STL12
ラッセル・マーティン, PIT11

受賞選手の成績はこちら。

ミゲル・カブレラ(30)
148試合 打率.348 44本塁打 137打点 出塁率.442 OPS1.078 3盗塁

アンドリュー・マッカッチェン(27)
157試合 打率.317 21本塁打 84打点 出塁率.404 OPS.911 27盗塁


カブレラは故障もあり、2004年から続けていた毎年150試合以上に出場という記録が途切れてしまったが、それでも打撃3部門は引き続き高水準。
あわや2年連続三冠王とも思われたがタイトル獲得は打率だけで、本塁打と打点は2位にとどまった。
53本塁打と138打点で二冠を獲得し今季大ブレイクしたクリス・デイビスもMVP有力候補ではあったが、一塁手であることと打撃の質的にカブレラの方が上回っていたことで票はあまり伸びなかったようだ。
もう一人の最終候補者トラウトは昨年同様MVP争いの有力候補になったがチーム成績がひどかったことも相まって2年連続カブレラに敗れる結果となった。
それでもWAR1位などトータルとしては相変わらずMLB最高クラスの活躍だった。
当初は中島のライバルとしてもフューチャーされていたドナルドソンがブレイクし4位に入っている点も興味深い。
そしてここでも日本人投手3人は下位票とは言え入ってきているのが素晴らしい。

ナ・リーグは3年連続で150試合以上に加え3割20本20盗塁を達成したマッカッチェンが受賞。
こちらはトータルとしての活躍が評価された形で、彼は弱点にもなっていた守備を大きく改善させたっことで総合力で抜きん出ることになった。
やはり守備負担の大きなセンターで高守備を見せるということの価値は高い。
デビュー当初から大きな期待をかけられていたゴールドシュミットは順調に成長し26歳の今季ブレイクに成功し、本塁打と打点の二冠を獲得。
今後数年間は毎年打撃タイトル争いに顔を出すだろう。
打撃だけでなく一塁手ながら守備・走塁でも貢献できる点が素晴らしい。
ダイヤモンドバックスがプレーオフに進出していれば彼の方がMVPを獲得していたとしてもおかしくないというパフォーマンスだった。
3位になったモリーナは怪我での離脱と首位打者争いから一気に失速していった感があるのが痛いところ。
それでもチームをワールドシリーズにまで導いたのは流石だ。
カーショウが結構上位にきているのも興味深く、もし彼が今季投手三冠だったらどこまでいっていたのかも気になるところだ。