2013年11月8日金曜日

異次元のスピードスター ビリー・ハミルトン

MLBのスピードスターというと誰を思い浮かべるだろうか。
十数年来のファンならばリッキー・ヘンダーソンやビンス・コールマンを、ここ数年でファンになったものならホゼ・レイエスやジャコビー・エルズベリーなどを思い浮かべるはずだ。

盗塁の価値というものは時代によって変わる。
パワー全盛のステロイドエラならばひとつずつ塁を盗まなくてもパワーで一掃することができたが、長打で打ち崩すことが難しい投手が多い時代は相対的に盗塁の価値も高まる。
アンチ薬物の気風が高まってきており、MLB機構もどうにかして薬物を切り離そうとしているここ数年は、どちらかと言うと投手の時代と言える。
そのため盗塁の価値も決して低くない現代のMLBであるが、100盗塁という夢のある数字は1987年のビンス・コールマン以来出ていない。
現役選手だけに絞ってみれば、最多は2007年にレイエスが記録した78個と100盗塁にはまだまだ遠い数字しか出ていないのだ。
レイエス、エルズベリー、クロフォードなどは100盗塁の夢をかけられてきたが全員達成することなく脚力の衰える30代に突入してしまった。
過去のスピードスター達のスピード全盛期が20代にあることを考慮しても少なくとも”足”の全盛期は過ぎてしまったと考えていいだろう。

最近出てきた若い選手に目を向けてみると、スターリング・マーテ、ジーン・セグラ、ベン・リビアなど新たなスピードスターたちが登場してきてはいるものの、100盗塁というほどのスケールまでは感じられないのが現状だ。

しかし今季、それだけのスケールを感じさせる若きスピードスターがメジャーデビューを果たした。
それがレッズの23歳ビリー・ハミルトンである。
ビリー・ハミルトンと言えば19世紀に3年連続100盗塁超えなど14年で914盗塁を記録した(盗塁数歴代3位で打撃も非常に優秀だった)殿堂入り選手なのだが、奇遇にも彼と同姓同名の若者が今スピードスターとしてMLBを席捲しようとしていることになる。
今季デビューしたハミルトンは両打ちの外野手で、2009年のドラフトでレッズに2巡目全体57位で指名されて入団した。
2010年ルーキーリーグで本格的にプレーし始めると、早速69試合で48盗塁と俊足をみせつける。
打撃もパワーレスであることを除けば悪くなく、翌年にはさらに飛躍してシングルA135試合で103盗塁を記録した。
しかも失敗は20個だけであり、ただ闇雲に走り回っただけではないということが見て取れる。
そしてさらに2012年にはマイナー132試合で155盗塁(失敗37) 打率.311 出塁率.410という異次元の成績を残し、155盗塁はビンス・コールマンの持つ記録を塗り替えてマイナーリーグにおける史上最多記録となった。
そしてそのスピードを活かすためにもショートからセンターへとコンバートされ、スピード不足のレッズは彼がメジャー昇格する日を待ち望んでいた。
今季はAAAに昇格したこともあって打撃が振るわず出塁自体も激減したためマイナーでは123試合で75盗塁と昨年に比べると大きく数字を落としたが、それでも9月3日にはついにメジャーデビューを果たした。
しかもただデビューしただけでなくそこから13試合に出場し13盗塁(失敗1)と存分にその俊足をふるい、9月18日のアストロズ戦では3安打4盗塁という大暴れもみせた。
レッズは深刻なスピード不足に悩んでおり、今季もチーム盗塁数は67盗塁(失敗35)でリーグ10位だった。
もしハミルトンの昇格がなければ54盗塁(失敗34)だったかもしれないと考えるとリーグ最低クラスと言ってもいい。
なにせ13しか出場していないハミルトンが盗塁数チーム2位であり、1位のチューも20盗塁(11失敗)と走らない方がマシというレベルだったのだ。
打撃に関してはあまり多くを期待しすぎるのは酷だろうが、ある程度の出塁が見込めるのであれば彼は来季から早速盗塁王のチャンスを得ることになるだろう。
盗塁を増やすのに重要なのはとにかく出塁すること、特に四球が非常に重要になってくる。
100盗塁を目指すのであれば少なくとも出塁率.360程度は欲しいところで、そういう部分は四球マシーンと化しているボットーあたりから学べれば最高だろう。
夢の100盗塁はついに出るのか、史上最高のスピードスターになる可能性を秘めた現代のビリー・ハミルトンに注目だ。



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