2013年12月12日木曜日

本塁上のタックルに関するルールが改正

2011年からMLBが引きずってきた問題に一つの決着がついた。
きっかけになったのは2011年5月25日のジャイアンツ対マーリンズの試合。
2010年に正捕手として定着し新人王も獲得したジャイアンツの期待の星バスター・ポージーが本塁上でのクロスプレーにより重傷を負い、一時は選手生命さえも危ぶまれた。
幸運にも2012年にはそんな大怪我から見事復活し、首位打者、オールスター最多得票、MVP、カムバック賞、ワールドチャンピオンとMLBを席捲し、名実ともにスーパースターへと名乗りを上げたのだ。
しかし、これだけの才能がたったのワンプレーで潰れてしまいかねなかったという可能性に加え、少なくとも2012年は全休するほどの重傷を負ったという事実から、アメリカではこの”本塁上でのクロスプレー”について物議を醸した。

このことに関する話題は日本でも事欠かない。
日本対アメリカの高校生同士での試合で行われたタックルや、NPBにおける外国人選手のタックルなどファンの間でも何度も議論が行われてきたはずだ。
アメリカ人というのは基本的に接触プレーを好む気質があり、だからこそアメフトがあれだけの人気を誇り、バスケやアイスホッケーを含む4大スポーツと呼ばれている。
そういうギリギリのせめぎ合いを楽しむアメリカ人としてはクロスプレーというのもエンターテインメントの一つであり、ランナーをブロックする、あるいはタックルで点をもぎ取るシーンは楽しみの一つでもあった。
しかしMLBを代表するスター選手や、そうなる可能性を秘めた若手選手などが不必要なワンプレーのために選手生命を絶たれるようなことがあれば、それはMLB全体の損失にほかならない。
クロスプレーがなくなって面白みが減ったとしても、スター選手が何人も消えていくことを考えれば随分とマシだろう。
今回MLBは本塁上でのクロスプレーをなくすことを投票で決定した。
これが選手会で承認されれば来季から適用されることになる。
少しのあいだはファンも選手も戸惑うことが少なくないだろうが、それも全てはMLBの利益を守るためのものだ。
MLB機構は常に前を向いて進歩している。
それを感じさせてくれるこの英断を、私は一ファンとして歓迎したい。

2 件のコメント:

  1.  このルール改正はおそらくファンを二分する論争の種になるでしょう。従来、本塁上のクロスプレーは野球の醍醐味の一つであり、もっとも「燃える」シーンだったことは事実だからです。それをほぼ完全に奪ってしまうとなると、野球というゲームそのものの在り方を変えてしまうことになりかねないのではないか。これは投手の牽制とボークの線引き(今年から三塁に投げるふりをして一塁に牽制球を投げるのはボークとなった)などと比べ影響が大きすぎるのではないかと私は思います。

     一方で選手が平均的に大型化し体当たりの被害が重篤になる危険性が増大したことや、「激しいプレー」というレベルを超えて相手を故障させる「故意」があったような粗暴なプレーが少なくなかったのも否定しがたい。選手の選手生命を脅かすようなプレーが野放しでは、長い目で見れば大リーグのためにならないのも事実です。ポージーの大怪我を鑑みると何らかの対処は必要だったでしょう(ちなみにもっとも接触プレーの多いアメフトの世界でも昔と比べるとはるかにルールが厳しくなっている)。
     しかし、それはクロスプレーをなくすという強度の手段を採用する前に「ラフプレーの認定やそれに対する制裁を強化すること」、「早く本塁に触れるのではなく、明らかに落球を狙ったプレーのみ禁止する」等のより制限的でない他の選びうる手段を採用することを考えるべきだったのではないか。例えばラフプレーを行った選手個人だけでなく、チームに対しても何らかの制裁(それも罰金のような間接的な制裁だけでなく、勝ち星の没収等の直接的な制裁)を科すとすれば、極端に粗暴なプレーは直接的にチームの害になるので大きな抑止効果があると思います。

     今回のルール改正に必要性と一定の理があることは認めます。古株のプロ野球OBやファンがいまだに口にすることがある「大リーガーは日本の野球選手に比べて根性や自己犠牲精神に欠け、おまけに腰抜けだ」などという誤った見解はもってのほかです(ただ、このルール改正でこの種の偏見が強化される恐れはあり心配である)。しかし、一方で「羹に懲りてなますを吹く」側面があることも否定できないと考えます。しばらく(1~3年)様子を見たうえで再検討をすべきだと思います。

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    1. コメントありがとうございます。
      新しいルールができると賛否両論出てくるのはやはり避けられないことですね。
      私はこれに関しては全面的に”賛”の立場に立っています。
      しかし試してみて野球の面白みが欠けてしまうのであれば、やはり数年で再検討をする必要はあるでしょうね。
      段階的な規制もアリだったのでしょうが、野球ファンの私個人としてはその間に有望な選手が大怪我に見舞われる事態だけは避けてほしいと願ったからこその賛成意見なので、ファンとしての感情がかなり入っていることも否定できません。
      ただどちらにしてもグラウンド上におけるラフプレーの認定に関しては有効なルールを考えていく必要はあるだろうと思います。
      本塁上の話ではないですが、このルール制定に関して日本のファンの間できかれた「次はゲッツー崩しの規制を」という声に関しては、私は否定派です。
      タックルに関しては接触が前提のプレーでしたが、ゲッツー崩しは守備側は避けることを前提としたプレーであり、これは内野手にとって必要な技術の一つとして私は捉えています。
      確かにスパイクの裏を見せるなど明らかに危険なプレーは規制されて当然ですが、日本のファンは日本人内野手がああいったプレーで怪我人を出したことから過度に反応しすぎではないのかなと思います。
      あれは避ける技術がない=内野手としての力量不足として捉えていいのではないでしょうか。
      少し話は逸れましたが、今のMLBには問題があれば変えていこうという姿勢がありますから、このルール改正で何か問題が生じてもまたしっかりと対策を講じてくれるだろうと思います。

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