2014年9月5日金曜日

MVPレースの展望〈ア・リーグ〉

9月に入りレギュラーシーズンも大詰め。
プレーオフ進出がかかるチームにとってはチーム順位が気になるところだが、もう一つ気になるのは各アワードの行方だ。
その中でも特に注目なのは白熱しているMVPレース。
まずは有力候補を見てみよう。

ア・リーグ

マイク・トラウト(エンジェルス)
134試合 打率.285 31本塁打 98打点 出塁率.369 OPS.920 13盗塁
fWAR6.3 rWAR6.6 wOBA.396

フェリックス・ヘルナンデス(マリナーズ)
29試合 14勝5敗 防御率2.18 206.0回 209奪三振 37四球 WHIP0.90
fWAR5.5 rWAR6.4 FIP2.59 xFIP2.59

ホゼ・アブレイユ(ホワイトソックス)
123試合 打率.322 33本塁打 99打点 出塁率.383 OPS.985 2盗塁
fWAR4.9 rWAR4.9 wOBA.419

ロビンソン・カノー(マリナーズ)
133試合 打率.321 12本塁打 71打点 出塁率.387 OPS.848 10盗塁
fWAR5.2 rWAR5.8 wOBA.366

ビクター・マルチネス(タイガース)
128試合 打率.332 28本塁打 90打点 出塁率.401 OPS.966 3盗塁
fWAR3.6 rWAR4.4 wOBA.407

チーム成績なども含めて、現状可能性が高いのはこの5選手だろう。
特に最有力と言えるのは上位の3名、トラウト、ヘルナンデス、アブレイユだ。
過去2年ともMVP最有力候補と言われながらミゲル・カブレラにかすめ取られてきたトラウトは今季も有力であり、なおかつ最大のライバルのカブレラはMVPレースに顔を出すことはない。
過去2年の成績なら今季こそはトラウトがMVPを獲得しそうなところだが、今季は少々勝手が違う。
9月に入ったばかりで既に本塁打と打点でキャリアハイを記録している彼は、打撃の傾向が明らかに変わった。
具体的にはより長打を狙うスタイルになり、フライの比率が大きく上がったのだ。
しかしその弊害は確実に現れており、長打力が上がった反面打率や三振率が悪化している。
また彼をコンプリートプレイヤーたらしめている優れた守備力は、数字上では今季は存分に発揮されていない。
彼が最有力候補であることには変わりないが、ここに他の選手がつけ込む隙がある。
野手で対抗馬はもちろんアブレイユだ。
DL入りでの離脱などもあったがあらゆる打撃スタッツで上位を走っている。
特に打率、本塁打、打点の3部門すべてでトップ5に入っている隙のなさが強みになる。
しかし守備・走塁での貢献度が低いため、総合力のトラウトに対抗するためには過去のカブレラのように打撃でリードする必要がある。
MVP投票で重要視される傾向にあるチーム成績でもトラウトには遅れをとっているため、三冠王とは言わないまでも本塁打、打点の二冠は獲得しておきたいところだ。
どちらかでもトラウトに劣るようならアブレイユの戴冠は厳しくなる。
投手でこの2人に対抗してくるのはヘルナンデスだが、MVP投票では投手という時点で少々不利になる。
知られているように、ほとんどの試合に出場する野手と比べて5試合に1度の頻度でしか試合に貢献しない先発投手はチームへの貢献度が低いと考えている識者が多いからだ。
とは言え先発投手は1試合に対する影響度が最も高いと考える者もおり、近年ではジャスティン・バーランダーが受賞したように投手にもMVPのチャンスはある。
しかしサイ・ヤング賞はほぼ間違いなしと言えるヘルナンデスだが今回は野手に対抗するのは少し厳しそうだ。
バーランダーの場合は24勝という数字の存在感と投手三冠というインパクトがあったが、ヘルナンデスは三冠獲得が厳しいのと他の投手と比較してずば抜けた数字がないからだ。
もし彼がMVPを獲得するなら投手三冠と20勝を同時に達成した時だろう。
それくらいやはり投手のMVPというのは難しい。
またチーム成績でも、マリナーズはプレーオフ進出はできても地区優勝までは厳しく、ヘルナンデスにとっては厳しい条件下での戦いだ。
しかしトラウトは調子を落としていること、アブレイユも初めてのMLBフルシーズンであることを考えるならヘルナンデスにもまだチャンスはあるはずだ。

この3選手以外でこれから次第では可能性が出てくるのはカノーとマルチネスの2だが、カノーはどうしても長打で見劣りする点、マルチネスは打撃専門である点を考えるとここから大きく追い上げても上記3人を上回ることは容易ではないだろう。
個人的にはやはり、最終的にトラウトが手にすることになるだろうと思う。

2 件のコメント:

  1. スカーバラ2014年9月21日 17:58

     ア・リーグのMVPレースも混戦になりそうですが、私は管理人さんの挙げた候補以外に二人の選手にもMVPになる資格があると思っています。

     一人はオリオールズのネルソン・クルーズ選手。現在ホームランダービーの先頭を走っており(打点も100を超えている)、オリオールズ17年ぶりの地区優勝に大きく貢献しています。打率が低いのが泣き所ですが、このままホームラン王を獲得すれば十分MVPに選出される可能性があると思います。

     もう一人はアストロズのホセ・アルトゥーベ選手。現在首位打者であり200安打も達成しました。何といってもあの小さな体でこの成績ですから驚嘆します。アストロズのチーム成績は振るわないのでそこが苦しいところですが、成績はMVPに値します。このまま首位打者を獲得し、かつ、票割れが起これば案外可能性はあるのではないでしょうか?MVPは個人賞である以上、個人成績を第一の基準とすべきであり、無理にプレーオフ出場チームから選ぶ必要はないと思いますし(地区最下位チームから選ばれたこともある)。


     余談。今年のプロ野球セ・リーグではどうやらMVPの選出に難航しそうだとのことです。大リーグよりチーム成績(優勝するか否か)が重視されるプロ野球ですが、優勝目前の巨人に目立った成績の選手がおらず(チームの総合力で勝ってきた証左であろう)、他球団の選手も今年はぱっとしないので、「該当者なし」になるという噂すらあるとか。最終的には誰かが選ばれるでしょうが、誰が選出されても物議を醸す困ったことになっているようです(タイトルホルダーから選出するのが無難だろうが)。

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    1. コメントありがとうございます。
      クルーズに関してはとにかく本塁打と打点の二冠を獲得できるか否かにかかっているでしょう。
      チームには多いに貢献していること間違いなしなんですが、本塁打や打点以外の部分で他の候補者に見劣りしてしまうところがありますし、基本的には守備 貢献度も高い選手ではありません。
      アルトゥーベは私も少し考えましたが、やはりパワーレスな選手には投票者は厳しい傾向にあると思い外しました。
      それでもチーム成績はともかく首位打者と盗塁王を獲得すればかなりの偉業だと思いますけどね。
      二塁打は量産していますし、今後長打力がさらにつけば第二のクレイグ・ビジオになれる可能性を秘めています。
      彼らも非常に魅力的ではありますが、やはり今回はトラウトがもっていくだろうと私はふんでいます。
      打点は今のところ1位で本塁打もクルーズに数本差。
      打率も彼にしては低いですし三振数もリーグ1位とネガティブな数字もありますが、結局は総合力という彼のイメージとチーム成績が全てを持っていくでしょう。

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